映画化された「DUNE/デューン 砂の惑星」において、その映像と音響の素晴らしさは近年稀にみるものでした。今回は、この大ヒット映画のボーカル収録に参加したサウンドエンジニアの一人に話を聞くことができました。Kostadin Kamcevは、Hans Zimmerが率いるチームの一員として2作目に参加しており、映画音楽制作の舞台裏を少し話してくれました。

あなた自身とあなたのスタジオについて少しお聞かせください。これまでどんなアーティストと仕事をしてきましたか?

私はマケドニアで生まれ、33年間そこに住んでいました。マケドニアでは、高校時代からレコーディングエンジニア/スタジオオーナーとして働いていました。商業用スタジオを3つ建設・所有し、その時代で最も成功した最高のアーティストと仕事をしました。

2000年の始め、自分のレコーディング・スタジオを始めようと思い、アメリカに渡りました。ニューヨーク/ニュージャージーエリアのいくつかのスタジオで働いた後、2002年に私が一緒に持ってきた機材で「Studio Mozart」をオープンしました。それ以来、クライアントリストは常に増え続けています。Studio Mozartでは、真のアナログセッションの録音からDolby ATMOSでの作業とミキシングまで、あらゆるフォーマットでの作業が可能です。まさにユニークなハイブリッドなスタジオです。

NY/NJエリアは、ジャズ、ロック、R&B、ヒップホップなど、多様な音楽スタイルがあることでも知られています。当然、私はあらゆる分野のメジャーなアーティストと仕事をしてきました。Lenny White、 Ron Carter、John Scofield、 Oz Noy、Spanish Harlem Orchestra、Steve Smith、Neal Schon、John Patitucci、Bobby Rondinelli、Thommy Price、DMC (RUN DMC)、Katrina (and the Waves)など、いろいろな方々と一緒に仕事をしています。

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「DUNE/デューン 砂の惑星」プロジェクトにはどういう経由で参加することになったのでしょうか?

もう15年以上も、優れた「リズム・ボーカリスト」(彼女は自分のことをこう呼ぶ)であるLoire Cotlerとは、彼女のプロジェクトや他のさまざまなプロジェクトで一緒に仕事をしてきました。彼女は、私がこれまでに仕事をした中で最高のボーカリストの一人です。Hans Zimmerが彼女を見つけ、やがて彼のスタジオのRemote Control Productionで数曲レコーディングするためにLAに招待するまでにはそう時間はかかりませんでした。この最初のコンタクトの後、彼女は今後のプロジェクトではニュージャージー州にある私の「Studio Mozart」から直接私と仕事をするのが最も快適であると、チームに私を紹介してくれました。彼女は、様々なオンラインデータ配信サービスを通じて、高品質のトラックを彼らに届けることができることを説明しました。試しに何度かやってみたところ、送ったトラックにとても満足してくれたので、まずは試しにやってみようとなりました。最初に手がけたのは、「X-MEN」シリーズの「ダーク・フェニックス」という映画です。非常にユニークなボーカルサウンドスケープを提供することができました。その後、ディズニーの映画「ラーヤと龍の王国」でJames Newton Howardと仕事をしました。そして、「DUNE/デューン 砂の惑星」に至りました。

このプロジェクトでは具体的にどんなことを担当されていたのでしょうか?

私の役割は、ボーカリストのLoire Cotlerを録音し、そのトラックをRemote Control ProductionのHansチームに送って映画のサウンドトラックに組み込むことでした。また、Hansが後で加工して様々な音声データにするために、Loireの声を大量に録音したりもしました。オーディオエンジニアそしてエディターとしても、録音した声のサウンドスケープにアイデアを出して彼女が本来持っている幅広いダイナミクスとトーンを引き出し、それが忠実に表現されていることを確認しました。また、ボーカルの様々なエフェクトやその他のサウンドスケープエフェクトの編集も担当しました。

「DUNE/デューン 砂の惑星」プロジェクトの特徴は何ですか?

Hansとはこれが2作目の映画でした。今回は、トラックの形や大きさに関して彼が十分な自由を与えてくれました。Loireは本当に素晴らしいシンガーで、人間ではありえないような声を出すことができます。私たちは一緒にボーカルのシェイプアップを行い、LAのチームのためにデモを作りました。彼らは私たちが送ったトラックにとても満足していたのでもっと欲しいと言って、追加の譜面を送ってくれました。

映画は気に入りましたか?

はい、もちろんです。この映画は、映画「STAR WARS」のインスピレーションとなった「DUNE」という本を見事に表現しています。この映画は「DUNE」の原作を表現しており、私はこのチームの一員になれたことにとても感謝しています。

大規模なプロジェクトにおいて音を収録する際に大切なことは何でしょうか。

最終的な成果物もさることながら、トラックの整理とラベリングがすべてです。このチームでは、必ず映画のコード、トラックの目的、アーティストのイニシャル、そしてナンバーを付けていました。というのも、映画の監督や作曲家は、せっかくお金と時間をかけてシーンの音楽を作ったのに、途中で気が変わってしまうことがあります。映画監督や作曲家は、せっかくお金と時間をかけて作った音楽も、最終的にそのシーンを見た後で、書き直し、再録音する可能性もあるんです。

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Vocal Chainはどのようなものだったのでしょうか?

マイクやプリアンプ、コンプレッサーを何十本もテストした後、メインボーカルチェーンは、私が所有する2本の75周年記念のNeumann M-149 Jubilee limited editionマイクのうち1本をAMS Neve 1073に入れ、Tube Tech CL-1Bでごく軽くコンプをかけて、そのままAntelope AudioのGalaxy 64 Synergy Coreへ送り、Antelope 10MX atomic clockでクロッキングして構成することに決定しました。DAWはPro Tools HDX2を選択しました。ボーカルチェーンのパラメーターは、彼女のダイナミクスとトーンの変化に合わせて常に変えていました。ボーカルのクオリティの高さには、全員が満足していました。私がレコーディングのデモを行ったとき、チームからボーカルにリバーブ(Sony Oxford Plug-in, 実機のEMT 140 plate, Bricasti M7, Lexicon 960…など)をかけてプリントするよう要求されました。Galaxy 64と10MX atomic clockは、そのシグナルチェーンと音質の大きな部分を占めていて、そのコンバージョンは非の打ち所がないほど原音に忠実でリアルでした。

他にどのような映画に参加されましたか?

最初に参加したのは『X-MEN: ダーク・フェニックス』、次にディズニーの『ラーヤと龍の王国』です。

作曲家によってアプローチの仕方が異なるのが非常に興味深く、私は幸運にもHans ZimmerとJames Newton Howardという業界の大物作曲家のもとで仕事をすることができました。

Hansは、ボーカリストとチームを信頼した上で、彼がトレースした方向性に対して自由に意見を出し、それが曲に新しいインスピレーションをもたらすのです。一方、Jamesは、非常に綿密に方向性と曲を用意しており、ボーカリストの役割は、その音に命と新鮮な空気を吹き込み、その歌唱力を生かすことでした。

今後どんな映画の音を録っていきたいですか?

「DUNE/デューン 砂の惑星」は、映画のためのトラックを録音するという意味で、本当に夢のような作品でした。映像だけでなく音楽も含めてイマジネーションが膨らむので、SF映画が大好きです。

ボーカルを録音する読者の皆さんに向けて、何かアドバイスはありますか?

まず、マイクとマイクプリ/コンプレッサーを覚えること。それから、目の前にいるボーカリストの声の音色を聴くのです。私は、彼らがスタジオに入って話し始めたら、すぐに彼らの声を聴いています。無意識のうちに、自分のマイクコレクションを調べて、どのマイクが一番彼らの声の音色を表現できるかを想像しています。そして、頭の中で消去していくのですが、まだ確信が持てないこともあり、予想が外れることもあります。これは、ボーカリストによってマイクの使い方が変わってくるからです。そして、まず自分の頭の中で選択肢に優先順位をつけ、そこから進めていくのです。予算と時間が許せば、7本、10本とマイクを変えていくこともあります。使用するチェーンが決まる前のLoireの場合もそうでした。