レコーディングを行う際、オーディオエフェクトというものは欠かせないものになりますが、自然なリバーブ成分というのも非常に大切なものです。これは音源と空間の関係から生まれるものです。昨今のベッドルームプロデューサーは、誰もが自由に使えるプラグインを所有しているものですが、多くの場合、デッドな部屋で録音されたトラックに対して同じリバーブを使用しています。今回のプロジェクトおける私たちの挑戦は、独特な反響特性を持つ場所を探し、その空間の音響のユニークなキャラクターを生かしたライブ演奏を行うことでした。そうすることで、ポストプロダクションでの処理を最小限に抑えた自然な残響を使用することができるのです。そして「神の目」とも呼ばれるプロホドナ洞窟は、このエキサイティングなレコーディングの舞台となりました。

テクノロジーというものは、私たちのイマジネーションをさらに広げるクリエイティブなプロセスに活用されるべきなのです。クリックするだけで複数の伝説的なマイクの音を柔軟に切り替えて使用することができるEdge マイクがまさにそれです。このマイクがあるおかげでどんな環境においてもこのマイク一本で様々なアプローチができます。そしてこの洞窟レコーディングにおいて、非常に重宝するEdge マイクはまさに「十徳ナイフ」のような存在でした。

レコーディングでは、2本のEdge Soloモデリングマイクを使用して、キックのサウンドを作り上げました。Kick Inでは、マイクをビーターに向けるのではなく、ドラムの木製のシェル側に向けるというアプローチをとりました。これはクリッピングを防ぐためですが、さらに重要なのは、楽器そのものの自然な響きとアタックが程よく混ざったサウンドを得られるということです。エミュレーションには、スタジオで使用するのと同じVienna 112を選択しました。Kick Outでは、キックの低域に焦点を当てました。Vienna 414のエミュレーションを使用することで、サウンドにさらなる透明感と均一感が得られました。Edge Soloマイクはスネアの録音にも最適でした(ただし、このマイクはピーキングやオーバーモジュレーションのリスクを避けるため、慎重にポジショニングを調整しました)。スネアトップにはBerlin 103エミュレーションで録音し、使用するスネアの暗さを表現し、ボトムはMinnesota 20に設定し、スナッピーの風味を加えました。

DrumsCave 2

オーバーヘッドの録音にはEdge Duoマイクをペアで使用しました。このような選択をした理由は、シンバルやカウベルを捉えるだけではなく、ドラムキットの全体像をもしっかり録音するためです。そしてそれぞれ指向性を双指向性(八の字)のBidirectionalにして、反響音も捉えるようにしていました。さらに天井の高さによってスラップバックの効果が異なるので、最もよく感じられる場所にドラムを配置しました。このように、同じセットアップで2つの異なるサウンドを録音することができたのです。Edge Duoでは、2つのメンブレンを別々に録音することができるので、マイクカプセルの両面を独立して扱うことができます。この場合、エミュレーションを行わない自然な録音が、このマイクのセットでは心地よく使用できました。

ルームマイクの位置は、事前のロケハンで洞窟を訪れた際に行ったいくつかの音響測定に基づいて判断しました。そのスポットではリバーブとスラップバックの効果を同時に捉えることができたのです。また、低域にフォーカスしたエコーが録音に溶け込むようなスポットもありました。ある意味、残響は500Hz以下でしか聴こえないように感じられました。これにより、録音に厚みが生まれ、全体的にダークなサウンドになりました。すべてのルームマイクには、Edge Quadrosを様々なポジションで使用し、求める効果に応じてM/SまたはORTFでマイクをセットしました。

DrumsCave 1

Orion Studio Synergy Coreは、原音を忠実に再現する、透明で色付けのないプリアンプを12基搭載しています。さらに、AFC™(Acoustically Focused Clocking)を用いた高品質なAD/DA変換により、デジタルでの録音を圧倒的な透明度で変換することができます。これらツールによって、私たちは臨機応変に録音と制作を行うことができました。Orionのルーティングマトリクスは、パラレルレコーディングを可能にしました。これにより、保険としてエフェクト通さない状態で全体を録音したものと、Synergy Coreエフェクトを使った掛け録りしたものを同時に両方録音しました。そしてスタジオで、わずかなEQとコンプ調整のみで、このセッションで捉えた洞窟のドラムの自然なサウンドを再現することができたのです。

道具というものは非常に重要で、失敗するも成功するも、その結果を大きく左右します。Antelope Audioのコンパクトでありながら対応力の高い機材を使用することは、品質と効率に妥協することないスタジオをそのまま現地に持ち込むようなものです。ぜひ、皆さんもこのポテンシャルの高さを経験してみてください。真のオリジナリティは内面から生まれるものですが、適切なツールを使うことで初めてそれが具現化できるのです。